兄弟でワインの輸入販売を手がけるVino Hayashiさんの事務所にお邪魔させて頂いて、膨大なワインの入った箱を前に、10名ほどで楽しんだ。
イタリアで最も権威あるワインアワードの一つ『オスカー・デル・ヴィーノ2012』において、最優秀ソムリエ賞を受賞したお兄さんが選んだワインを、弟さんの解説を聴きながら飲めるという、たいへん贅沢な会だった。
シャンパンに始まり、白、赤と、もう、憶え切れないくらいたくさんのワインを飲ませて頂いたのだけれど「もう売る分は無い、とっておきがあるんだ」という話になって、なんだかんだみんなで無理を言って、それを出してもらった。
シチリア島エトナで産まれた、Etna DOC Rosso “N’Anticchia”(ナンティッキア) 2008。ナンティッキアはシチリアの方言で「ちょっとだけ」という意味らしい。素晴らしいワインだった。
他の年のナンティッキアも飲ませて頂いて、もちろんそれも美味しいなあと思ったのだけれど、全然違った。
正直なところ、ワインを少しづつ飲みはじめて、まだ日も浅い。ブドウの品種だって、自分の好きなものが少しづつ見えてきたくらいで、国や土壌、醸造方法などは、まだまだ分からない。作り手やヴィンテージとなると、お手上げに近い。
だから、的確にワインを語る言葉を、まだ持ち合わせてはいない。感じたことを感じたように、味わったことを味わったように述べるしかないのだけれど、これまでにも美味しいワインを飲んだことは幾度かあった。
どちらかというと僕は濃厚な赤ワインが好きで、青カビのチーズやフォアグラと合わせた時の美味しさがたまらない。ワイン単独で、というよりもマリアージュを楽しむタイプだった。
ナンティッキアの2008年は、その香りだけでうっとりとできるような、素晴らしいワインだった。
桃のような甘い香りが素晴らしく、ひとくち飲むと、広がる美味しさ。
赤いワインはチーズと楽しみたい僕が、それらを口にしたくない。と、思った。
単独で、じっくりと、味わいたい。飲んでしまうのがもったいないなと、そんな風に想えるワインだった。
それでも、林さんによると、素晴らしいワインなのだけれども、このワインのポテンシャルからすると、最高に美味しい時期はもう少し先なのだとか。
もう間違いのないセレクションだな、と思ったのでとり急ぎ、定期購入をはじめた。毎月2本、オフィスにワインが届くことになった。
この毎月届くワインをみんなで飲む会を、1~2ヶ月にいちど、やりたいなあ、と思った。
美味しいものをゆっくりと味わうひとときが、人には必要で、それぞれの人がよりすぐったおつまみを持ち寄って、面白い仲間たちと、ワインを楽しみたいように楽しむ。
たとえば、毎月・月初の金曜日なんて、良いのかも。
はじめの1本は、学部生の頃だったか。
もとより筆記具の好きだった僕に、友人が誕生日の祝いに、贈って寄越したのだった。
確か、PILOTのものであったと思う。おろしはじめの頃より初心者に向いた、とても書き易い万年筆で、もう錆び付いてしまったけれど今も部屋のどこかに眠っている。
次の一本は、オンラインで選んだ。クレジットカードのポイントで引き換えて、手に入れた。
ParkerのUrbanというシリーズの万年筆で、女性的な嫋やかなフォルムと、深く美しい群青色を湛えていた。
今ではもう、はじめの頃の書き味は思い出せない。
3年ずっと使っていると、先端のイリジウムが何度も紙と擦れて、
自分の書き癖と合った、ここちの良い滑り具合に仕上がるのだった。
オフィスに置いて、時たま少し、キャップを開ける。
数年使うなら、もう少し良いものを持とう。
いつも使うものだから、もっと心地よいものを持とう。
そう思って、今の万年筆を探しはじめた。
週に1回、2回、伊勢丹や丸善、伊東屋へゆく。
さっと見るだけの時もある。
じっくり見たり、手にとったり、試し書きをしたり。
好きな色合い。木軸の手ざわりや石軸の硬さや重さ。
もちろん金属でも樹脂でも。
しばらくすると、自分の好きなものたちが見えてくる。
気づいたら、この一本となって。
なんども店頭やウェブで見たりして。
数ヶ月は逡巡するんだけれど、良いことのあった日に、買うんです。
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