CEBU, Philippineから視る「産業が無い」ということ

セブ島に行ってきた2015-09-23-17.23

休暇を繋げて10日間、CEBU, Philippineへ行ってきた。 セブ島は四国の1/4程のサイズ4,500平方kmの島に、四国の8割程の人口330万人が暮らしている。 一個15ペソ(約40円)の露天で売っている唐揚げから、いわゆる”高級”リゾートであるシャングリラホテル(Shangri-La’s Mactan Resort and Spa, Cebu)、Plantation Bay Resort and SPAまで、広く貧富の差を目の当たりにし、考えたことがある。

セブ島の経済の状況

通過はペソ。現在のレートで1ペソ=約2.5~3円。
人件費が安い。その為、飲食店には過剰にスタッフが居る。ヒアリングによる現地の平均日給は300~400ペソ。1000円いかない程度であろうか。月26日労働し、10000ペソ程度を得る。

日本の水準から言うと、従って人件費率の高いサービスが安い。マッサージが200~400ペソ/1H。日本の1/5程度だろうか。練度は高いが、人による施術のばらつきは大きい。チップを明示的に要求する人も居る。停電の中的確に施術されたのは驚いた…。

外食も日本水準で考えると比較的安いが、現地の給与水準からすると劇的に高い。ピザ1枚で日給が飛ぶ程度。ただし、下図のような露天であれば15ペソで唐揚げ、焼きポーク等が食べられる。
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スーパーマーケットに行くと、生鮮食品等、フィリピン内部で調達できるものは安く、エビアン等の海外輸入品は高い。海外からの輸入品は日本と価格が変わらないと考えてよい。海外ブランドでも、コカコーラ等、フィリピン内に工場があるものについては、比較的安く購入できる。
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デジタルデバイスは非常に高い。iPhoneの充電ケーブルの純正品を買おうとすると、月収の1/5が飛んで行くことになる。TV売り場や、SONYやサムスンの店舗では分割払いを推していた。

服は、変なブランドがつかなければ安い。ブランドものは偽物と思しきものも多い。デザインは、まあ格好いいなんてことはそれこそ心の贅肉かもしれないのだが、日本人のセンスに合わない。縫製もそれほど良くはない。

市街地では交通量は多く、排気ガスがひどい。タクシーの初乗りは40ペソ。30分タクシーにのっても日本の初乗りに届かない200ペソ程度。余談だが多くのシェアを占めていると思われるKENタクシーは、日本人がオーナーだと運転手から聴いた。ジプニーというトラック様の乗合バスに乗ると7ペソでどこまでも行ける。信号は市街地の一部にしかなく、車が行き交う中を歩行者は無理やり横断する。

産業がない、ということ

セブにははっきり言って産業が無い。強いて挙げるとすると、マンゴーやパイナップルの南国フルーツ。教育が英語であることを活かした語学学校(但しオーナーは韓国系だったり中国系だったり日本系だったり)。そして、リゾートを中心とする観光業だ(但し、最大のシャングリラホテルは香港を拠点とする中国系)。ショッピングモールおよび地下資源系を経営するフィリピン系財閥も3~4あるが、例えば不動産投資およびショッピングモール開発を行うアヤラ財閥ですら売上500~600億ペソ(1.8兆円程度。下記画像はアヤラモールの様子。なお、日本のイオン売上7兆円程度)。
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自国に産業がないこと、あるいは自国通貨安であることは、消費者として輸入品を楽しむことを不可能にするほど桁が高くなる。また、産業めいたものがあっても、自国民がOwnerでない時、それは搾取の温床になる。

例えばある語学学校のケースでは、平均して月100名の生徒が在席しており、月15万円程度を支払う。1500万円/月。対して、50名の講師を雇うことは、50万ペソ。約150万円で可能になる。人件費率10%。これに微々たる光熱費および家賃(平均2000ペソ/部屋・月から考えて20万ペソくらいか)。合計70万ペソ200万円。販管費率13%で経営ができてしまう。なお、日本の英会話銘柄で上場しているGABAの人件費率と比較すると、販管費30%と半分程度。

あるいは、リゾート。20年前にできた人口プールのPlantation Bay Resortはとても美しかった。だが、入場料は現地月収の1/5であり、外国人しかいない。この時は主にオーストラリア、韓国、日本から。
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Shangri-La Mactan Resort, CEBUでは、ここで一日過ごすと、現地の人の月収くらいかかるのだが、確かに地上の楽園かと思うくらい素晴らしかった。もちろん、日本でShangri-Laに一泊するよりも遥かに安い。だが、現地の人による、外国の人の為のサービス(あるいは、一部自国の金持ち向けでもある)。
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そのビジネスを誰が持っているか、ということ。それに値する自国(民)がオーナーの産業があるか、ということ。その点の重要さについて思いを馳せる10日間になった。

What the Hospitality means

Shangri-LaでSPAを待っている間、何気なく雑誌をめくっているとこんなフレーズに出逢った。

“I would really love to promote Lapu-Lapu City’s ecotourism spots because we have a lot to offer-the beaches, food, culture and most especially our hospitality.”

日本も最近hospitality(お・も・て・な・し)を推しているようなのだが、hospitalityに頼り始めることは、実は危険なことなのかもしれないとすら思う。その時は産業が自国に無いことの証でしかないかもしれず、ホスピタリティオンリーの競争はどう考えたってレッドオーシャンだ。卓越した産業(それがサービス業でも勿論よいが)とCrossされて始めて成果を持つのだから。産業をつくり、仕組みをつくり、ブランドをつくり、人々の認知に対して仕掛けていかないといけない。貴重な自国の労働力が、他の誰かを儲けさせるために安く簒奪され、その提供しているサービスをいつの日も、自国の人が受けられない、という状況はやっぱり、なんだかなあ、と思うなあ。

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