2 × 2 マトリクスには4象限ありますが、そのうち4つ全部使う、2つを使う、1つだけ使うという3通りの使い方があります。それぞれの効用についてみていきましょう。

4象限すべてを使う:分類マトリクス

4象限すべてを使うマトリクスは、対象から本質的に重要な2つの軸を抜き出し、わかりやすく全体を捉えたり、対象をカテゴリ分けしたりするためのマトリクスです。

2 × 2 Matrix::DiSC 理論
2 × 2 Matrix::DiSC 理論

たとえば、4.1 相手を知るで詳しく述べる、DiSC 理論では、感情開放度の高低と独自性の高低を用いて、人を4タイプ:コントローラー、プロモーター、アナライザー、サポーターの4カテゴリに大まかに分け、相手の立場にたったコミュニケーションを行いやすくします。

このような、4象限すべてを使うマトリクスを描く場合、2軸は相互に独立(依存・函数関係の無い) なものを選ぶとうまくいきます。

2象限を使う:分析マトリクス

2象限のみを使うマトリクスは、問題発見や分析の為のマトリクスです。

比例関係の2象限

下図のように、一見、依存(比例)関係のある2軸を選び、対象をマッピングします。

2 × 2 Matrix::比例:模試偏差値と合格校偏差値
2 × 2 Matrix::比例:模試偏差値と合格校偏差値

比例から外れているものに、新しいアイディアや、今まで誰かが気付かなかった不思議、一般常識と異なる新規性が隠れている事があります。

1象限のみを使う:決断マトリクス

1象限のみを使うマトリクス *1 は、残りの3つを削ぎ落とす、残りの3つを「辞める」為のマトリクスです。4象限すべてを使うマトリクスのように、「全体」を抑えてから、そのうち1つを選ぶ、といった使い方をします。いわばポジショニング選択の為のマトリクスです。

トレードオフ型の選択
2 × 2 Matrix::トレードオフ型
2 × 2 Matrix::トレードオフ型

2象限から1象限に絞るタイプです。世の中には、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンなど、トレードオフの関係にある事象が多くあります。そんな中で、自分はハイリスク・ハイリターンで行くのか、ローリスク・ローリターンでよいのか、という選択を迫るのに使えます。

4象限から1象限を選択する
2 × 2 Matrix::選択/ポジショニング型
2 × 2 Matrix::選択/ポジショニング型

図のように、4象限から1象限を選択する/今居る象限から移動する指針を得るために使えるのが、この種のマトリクスです。
例えば、人材をやる気×能力(Will×Skill) に分類し、あなたが採用側であれば、能力もやる気も高い人材を採用しよう。優先順位としては、次点が能力が低くてもやる気がある人材、その次が能力はあるがやる気が無い人材かな、といったように。
逆にあなたが社員で、能力もやる気も無いのであれば、せめてやる気くらい出そう… といった使い方をします。

2 × 2 マトリクスの作り方

それでは、どのように2 × 2 マトリクスを作れば良いのでしょうか?

1. 問いを設定する

まずは仮説的に問いを立てましょう。シミュレーションしたり、データを見たり、本を読んだり、思考錯誤したりしているうちに問いが変わる事はよくあることですが、まずは問い:何を知りたいのかという設定をすることです。マトリクスにするということは、2 × 2 = 4 の窓から零れ落ちる、多様な現実を無視し、切り捨てるということです。何かを学びたいなら、すべてを学ぼうとしてはならない [1] *2 という格言通り、マトリクスは、学ぶべき事柄以外を切り捨てます。だから、本当に重要な2軸を取り出すためには、まずは明確な問いを立てる必要があります。

2. 軸を創り、見つける

問いを立てたなら、仮説的―トップダウン的―に軸を作ってみましょう。おそらく重要なこと、おそらく本質的なものをいくつかピックアップしましょう。その軸は、設定した問いに対し、1. 完全な。2. 最小の。3. 独立な。見方をしようとすると、うまくいきます。

次に、観測の中から軸を見つけましょう。データ、書籍、レポート、事例から、軸を探し、試行錯誤し、シミュレーションし、要素や事実を要素分解と再構成を行い、本質を抽出しようとします。

3. 空白を満たし、名前を与える

軸を作り、値(高低、大小、左右、今昔、A とA 以外など) を設定すると、4つの象限ができます。そこに、データや事例をあてはめてみましょう。この時、うまく当てはまらないことや、綺麗に埋まらない空白が出てくる事があります。可能性は二つ。1. 分類の失敗→軸作りに戻る。2. データに無い、新しいものを発見→深堀すべき。のどちらかです。2 × 2 マトリクスは、たった4つの空白であり、同時に4つもの空白でもあります。象限の空白が埋まらないことが思考の空白を産み出し、新しいものを考える発想力に結びつく事があります。

2 × 2 Matrix::BCG ポートフォリオ
2 × 2 Matrix::BCG ポートフォリオ

そのようにして、空白を埋めたら、次は各象限をわかりやすく命名しましょう。図のBCG ポートフォリオのように、単に各象限に事例を配置するだけでなく、その象限を何か1言でまとめる事によって、理解のしやすさがグッと上がります。そして、これら空白が対象をきちんと説明するが、意味のない象限が少ないか、チェックしてみましょう。

4. マトリクスを使う

マトリクスを作ったら、その上で思考を深めます。例えば、1つの象限を選択しさらなる構造化へと掘り下げます。あるいは、あるデータや、人や、物事をカテゴライズしたり、脳内シミュレーションにより、「何をどうするべきか」という、示唆をくみ出します。示唆というのは、100% の答えではないが、論点を絞り込むために役に立ち、方向性を与える情報の事です *3

また、発展的には軸から、自分を読むことを意識しましょう。軸とは、自分で見出した重要ポイントですから、それは裏を返せば自分が何を大切にしているかという事の表明に他なりません。

*1 1つ選ぶのも3つ選ぶのも同じです
*2 “すべてを見る”ことは”すべてを知る”ことにはならない. むしろ知るためにはこまかい事柄のうちどの部分を無視したら良いかを知ることが必要である. [1]
*3 理系的に言うと、エントロピーを下げる情報ってやつですね